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待機児童対策?!育休とると、子どもが保育園を退園させられる?!パート1<~子どもにとってのこの問題~>/2015年6月

親が育休をとると、上の子に保育園を退園させることを決定した自治体

2015年4月から「子ども子育て支援新制度」が始まり、自治体により親が育児休業(以下、育休)をとることによる子どもの保育継続について異なる見解をだしました。今回は3つの自治体を例にとりあげます。

 

A市:2015年3月までは、年長のみ在園可能で、それ以外の年齢の子どもは親が育休中退園になっていた。しかし、2015年4月からは、保育園を利用している時点での育休取得であれば、在園児の保育は継続となる。変更理由:子ども子育て支援法の施行規則に「育児休業取得中に、 既に保育を利用している子どもがいて継続利用が必要であること」という文言が入っているから、法律に則ったとのこと。

 


B市:育休中は基本的に退園。出産後、半年は利用継続できるが、半年経過で退園になる。対象は0~2歳児クラスの子ども。待機児童が多いため、この年齢が対象となる。在園が継続される理由は母親が疾病があるという理由のみ。退園になった場合、翌年以降の入園希望の際、入園判断のポイントの加点や確実に入園できるという保障はない。
*2015年3月までは、在園が継続される対象が5歳児のみだったが、2015年4月から年齢を引き下げた(3歳児以上は在園が継続)

 


C市:2015年3月までは、年齢関係なく、保護者が保育の継続申請書を出せば、施設長の判断で在園可能。2015年4月からは、0~2歳児クラスの子どもは、親が育休をとる場合、出産の翌々月に退園。在園が継続される理由は親が疾病がある、生まれた子に障害・疾病等がある、生まれた子どもが双子以上の場合等のみ。理由は、国の育児休業における対応指針に則ったとのこと。退園児童が再入園するときはかなりの点数を加点する。

 


国が、ある法律を決めて、各自治体に「これに基づいて運用してね」と通達したにも関わらず、自治体によってずいぶん運用(解釈)が異なるというのが気になるポイントです。

 

  • A市は、今までは退園させていました。しかし、新制度(法律)に基づき、親が育休中も年齢関係なく在園児の保育は継続と決めました。(対応柔軟化)
  • B市は、今までは、4歳以下は親が育休中は退園させていました。しかし、新制度になり、待機児童のかねあいもあり、2歳児以下を退園させることを決定しました。(対応柔軟化)
  • C市は、今まではどの年齢の在園児も保育継続でした。しかし、新制度になり、国の方針に基づき、2歳児以下を退園させることを決定しました。(対応悪化)

 

 

国が示した同じ法律なのに、ずいぶん解釈が自治体によって異なるようです。

目的は何?待機児童対策?

B市は、はっきりと、待機児童対策と言っています。C市のHPを見ると、「育児休業により保護者による保育ができる状況下にあるときは、ご家庭で保育をしていただくことを基本とし、本来保育を必要とされている方に対して、保育園等をご利用いただくことが然るべきと考えています」とあります。こちらも待機児童対策ということですね。

 

ここで皆さんに知っておいてほしいことがあります。【児童福祉法では、両親が共働きなどで保育できない子どもを、市町村は保育所で保育しなければならないと定めている】ということです。つまり、【待機児童がいる時点で、その自治体は、明確な違法状態にある】ということです。

 

それゆえ、正当な待機児童対策は、保育園を作ることです。B市とC市は、違法状態にも関わらず、そのことを放置し、目先の待機児童対策に走っているとしか言えません。

 

また果たして待機児童対策になるのかも疑問です。仮にC市の1歳児クラスの定員が10人(A~J君)としましょう。親が育休をとった、A,B君は退園。そして新たに、K,L君が入園します。翌年2歳児クラスになります。C~L君の10人はそのままクラスがあがります。2歳児クラスの定員が15人。新規に入れるのは5人です。そこに、退園したため加点された、A、B君が入ります。残りの3枠は、ポイントが高い子が入るでしょう。

 

退園させないA市の場合、1歳児クラスの定員が同じ10人(A~J君)、2歳児クラスの定員が15人。A~J君の10人は1歳児クラスから2歳児クラスにそのままあがります。新規に入れるのは5人です。ポイントが高い順に5人の子が入ります。

 

A市もC市も2歳児クラスは結局新規の枠は5人しか入れません。これってよくよく考えると、C市のは、ただの待機児童交換作戦にしかすぎませんよね。仮に、翌年度に新しい保育園をひとつ作るだけで、2歳児クラスは新規の枠で15人が入園できます(もちろん他の年齢クラスも定員分新規入園ができます)。当たり前ですが、こっちの方が待機児童対策の王道ですよね。

子どもにとってこの問題はどうなのか?~心理の視点からの考え~

退園させられた子どもの心は、「混乱」します。1歳児クラスの子どもの気持ちに思いを馳せて具体的に考えてみましょう。


1つ目のケース:仮に下の子が10月に生まれたら、C市の場合翌々月の12月末退園ですね。1歳児クラスなので、説明を受けても理解できないでしょう。ある日突然、自分の居場所がなくなります。混乱を抱えたまま家庭で過ごします。そして、3ヶ月後の次の4月に加点されて再度元の園に戻ったとします。再度混乱が生じます。3ヶ月間通っていなかった園に、また通いだすのです。安心して過ごしていいのか、また突然いけなくなるのかわからない不安を抱えたままで4月がスタートします。

 

2つ目のケース:上に5歳児クラスの兄がいる1歳児とします。下の子が生まれました。C市の場合、1歳児クラスのこの子のみ、翌々月退園、兄は保育継続です。すると、兄は今までと同じ保育園に通えて、ある日突然自分だけ通えなくなります。母と兄と自分と生まれた赤ちゃんと保育園に毎日行くのに、自分だけはクラスに入れないのです。まさに混乱状態です。

 


待機している側の保護者からしたら、このような政策に賛成される方もいらっしゃるかもしれません。でも、大事なことは、【子どもの気持ちを考えること】だと思います。誰かの子どもが犠牲になるのではなく、どの子も安心して楽しい保育園生活が過ごせるように、待機児童対策は、保育園の増設で対応すべきだと思います。

子どもにとってこの問題はどうなのか?~心理の視点からの考え~

ある日突然、自分の居場所を失った子どもは混乱します。混乱した気持ちを子どもはどう表現するのでしょうか。1歳児クラスといえども、月齢による発達の差が大きいので2つのケースが想定されます。

 

①言葉で訴える
「〇〇君も、保育園いく!」「△△ちゃんと遊ぶの」「〇△先生と遊ぶの!」「なんで?」「どうして?」等

 

②体で訴える
夜眠れない
子どもによってはチック症状として出る
原因不明の体調不良(発熱・湿疹・下痢等)
食欲不振
機嫌が悪くなる
イライラする

 

言語での表現を獲得中の子どもは、自分自身で気持ちを整理することが難しく、その結果、混乱を泣き叫ぶ形で表現したり、体で表現したりします。

子どもにとってこの問題はどうなのか?~法律の視点からの考え~

私は心理の専門家で法律の専門家ではありません。だから、餅は餅屋ということで、この件について、弁護士の先生に伺ってみました。

 

3児のパパでもあり、保育園パパOGでもある原和良弁護士(弁護士法人パートナーズ法律事務所代表)に教えていただきました。

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親が育休をとった場合に、保護者が希望したわけでもなく、子どもが在園している保育園を退園させられるこの問題は、


「子どもの発達保障・人格形成権の侵害にあたります。子どもは、人として最大限の尊重をされなければなりません(憲法13条)。また、子どもの権利条約が、締約国に『児童の最善の利益が主として考慮される』ことを義務づけていることに反するし、児童福祉法の『児童の心身ともに健やかに育成する責任』に違反します」

と、その問題点を教えてくださいました。

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 原弁護士、わかりやすく問題点を教えていただきありがとうございます!

不思議ですね。どうして、自治体が法律等に違反することをするのか? でも、待機児童がいる時点で違法状態ということは、案外よくあることなのかもしれませんね。

まとめ

親が育休をとった場合、保護者が希望したわけでもなく、子どもが在園している保育園を退園させられる問題について、子どもにとってどうなのかという視点で今回考えてみました。


心理の視点として
・居場所を失った子どもの心は混乱する
・混乱した気持ちを、子どもによっては、言葉で訴えたり、体で訴えたりする

 

法律の視点として
・子どもの発達保障・人格形成権の侵害にあたる

というポイントがあります。

 

待機児童問題として
・児童福祉法では、両親が共働きなどで保育できない子どもを、市町村は保育所で保育しなければならないと定めている
・待機児童がいる時点で、その自治体は、明確な違法状態にある

という2つのポイントがあります。

 

【待機児童対策は、保育園を増設すること】、子どもの気持ちを混乱させるこの政策が全国に広がらないことを願います。
現役保育園ママとして、そして臨床心理士として、私もこの問題を注視していきたいと思います。

このテーマについては、色々な考えがあると思います。皆さんからのコメント、お待ちしております!

Mama's profile/プロフィール

ひらきだ ゆき

ひらきだ ゆき 【臨床心理士 精神保健福祉士】

記事テーマ

カウンセラー通信:自分らしい楽しいお産と子育てをしよう 

初めてのお産・子育てって不安ですよね?でも大丈夫。ママが主体的であれば、赤ちゃんも力を合わせママとお産を頑張ってくれます。初めての母子での共同作業のスタートが主体的であれば、その後の育児もとまどうことはあっても、そのママらしい力が発揮でき、赤ちゃんも自己発揮できます。そのお手伝いを、カウンセラーの視点から楽しく具体的にさせて頂きます!

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