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子どもの飲食と放射性物質

東日本大震災関連特別寄稿 教えて!ドクター

子どもの飲食と放射性物質

原発事故の放射線(※1)による水道水や農産物の汚染が報道され、放射線は見えないだけに不安が高まっています。水は健康の維持に不可欠だけに心配が拡大しています。放射線に関する言葉を整理し、正しい対応をまとめてみます。

(1)飲食物はベクレル値で

放射線汚染物を口に入れる時に気にするのがベクレル値(※2)です。暫定規制値は放射性物質により様々で、飲料水ならば大人の場合、放射性ヨウ素は300ベクレル/kg以下、放射性セシウムは200ベクレル/kg以下となります。暫定規制値以下であれば問題ありません。またベクレル値が国の基準を超えている飲料水・農作物・魚は市場に流通されません。

(2)乳児の飲料水の放射性ヨウ素の暫定規制値

放射性ヨウ素暫定規制値は、1年間飲み続けた場合を想定して決定されます。乳児期(1歳未満)は、ミルクで育てた場合、たくさんの水を飲むことになりますが、1年間飲み続けても影響が出ない値です(乳児100ベクレル/kg以下)。1歳以上なら300ベクレル/kg以下とされています。

母親が放射性ヨウ素300ベクレル/kg以下の汚染水を飲んだ母乳栄養児の場合ですが、母乳への移行は1/3以下と考えられていますので心配ありません。

(3)ミネラルウォータの注意

ミネラルウォータの一部の硬水では粉乳が十分に溶解しないことがあり、また多くのミネラルが含まれており、乳児のじん臓に負担を与えることがあります。この場合には水道水を用いる方が安全です。また代用水が確保できない時は、通常通り水道水を使用して下さい。水の制限したための脱水症の方が健康被害をもたらします。

(4)水道水の保存や煮沸は?

汚染水を保存すると半減期に伴い放射線は減退しますが、雑菌の繁殖が心配です。一般的な家庭用浄水器ですが放射性物質を減らす証明はされていません。また、煮沸はかえって放射性物質の濃度を高める可能性があり、おすすめ致しません。

(5)胎児への影響は?

妊婦から胎児への移行は非常に少ないです。子どもと同様に母体が水分を制限しすぎての脱水症の方が母胎に問題となります。

飲食以外に、雨や風で運ばれたちりの放射線も気になるところですが、正しく理解し、必要以上に恐れず、政府や学会からの見解に耳を傾けて冷静な判断をお願いします。

参照:日本小児科学会、日本周産期・新生児医学会、日本未熟児新生児学会の共同見解「放射性ヨウ素が測定された水道水摂取」(PDF)

ほ乳瓶が煮沸できない場合の対応は以下を参照下さい。

参照:日本小児科学会HP「先進国における災害時の乳児栄養」(PDF)

※1 放射線とは

「放射線」を家の中の光に例えると、電球が「放射性物質」にあたり、その電球 が出す光が「放射線」。光の強さ(能力)が「放射能」となります。 放射線は、粒子線(α線、β線、中性子線など)と電磁波(γ線、X線、紫外線、赤 外線など)に分けられます。太陽光線のうち波長が短くエネルギーの高い光が紫 外線で、皮膚や目に問題となることはご存じと思います。

※2 ベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)とは

ベクレルは放射線を放つ側の強さ(放射能量)の単位で、主に飲食時に問題(内 部被ばく)となり、もし汚染水なら1kg(=1L)当たり(ベクレル/kg)と表示されます。シーベルトは放射線を受けた側の放射線の量(被曝線量)で、1時間当たりの量(ミリSv/時)で表示されます。

ベクレル値(ベクレル/kg)を体への影響を見るためのシーベルトにするためには換算が必要です。例えば1kgあたり15020ベクレルのヨウ素が検出されたホウレンソウを15g食べたとしても、係数計算すると約0.0049mSvと非常に小さな値になります。

服部益治先生

兵庫医科大学小児科教授、医学博士。日本小児科学会専門医、日本腎臓学会専門医。兵庫県小児保健協会副会長、兵庫県小児科医会理事ほか。専門は、小児科全般、小児保健、傷害予防、腎臓病、夜尿症など。次世代を託す子ども達に夢大きく心豊かに育ってもらうため大学内外で活動中。

服部益治

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