ハッピー・ノート.com

祇園祭り/2014年7月

はじまりました

コンコンチキチン、コンチキチン♪

7月に入って京の町は祇園祭りモード全開です。祇園祭は7月1日の『吉符入り』という神事始めからスタートし、14~16日の『宵山(よいやま)』、17日の『山鉾巡行』をクライマックスに、31日の『疫神社(えきじんのやしろ)夏越祭』まで、たっぷり1ヵ月間盛りだくさんのスケジュールで繰り広げられます。

このお祭りは西暦869年、疫病流行に八坂神社が御霊会(ごりょうえ)を催し疫病退散のための祭りとして行われたのが始まりです。屋根に鉾や長刀を立てた33基が祇園囃子を奏でながら、都大路を進みます。

お祭りのスケジュールや山鉾の巡行ルートはサイトや情報誌でチェックするとして、地元の方に見どころを聞いてみました。

「17日なら『注連縄(しめなわ)切り』が見られる場所。24日は49年振りの逆まわりの巡行。まず新町通りを御池に出るところでの『辻回し』。御池通りを市役所まで行ってそこから四条河原町。四条通を新町まで行きお囃子も遠く盛り上がりの中、最後の辻回し。すみません、見所は全部!(笑)どこから見ても、『動く美術館』は素晴らしいよ!」

という、わくわくする答えが返ってきました。

山鉾

『動く美術館』と表現される山鉾は豪華絢爛! 構造は釘を使わない木造建築。そしてその壁は染織品である懸装(けそう)に覆われています。人形や彫刻、彩色などには江戸時代美術の粋が集められています。懸装は西陣織にとどまらず、ゴブラン織りや中国明代の綴錦、朝鮮錦、ベルギー装飾毛綴、ペルシャ製の華綴などなど、鎖国の時代も乗り越えて、国際色豊かであります。また古いものだけでなく現代の新しい感性も取り入れた現代日本作家の作品もあります。

全部で33基の美しい『動く美術館』、その一部を見てみましょう。

 

まずは、『長刀鉾』(なぎなたほこ)

 「くじ取らず」(巡行の順番を決めるくじを引かない)で毎年先頭を行く。 唯一、生き稚児がのる。

 

IMG_0844 (1).JPG

『船鉾』(ふねほこ)

 船形をした鉾。「日本書紀」の神功皇后の新羅出船に因んでいる。

IMG_0853.JPG

 

 

『橋弁慶山』(はしべんけいやま)

 弁慶と牛若丸が五条の橋の上で戦う姿を人形で表現している。

IMG_0850.JPG

 

『浄妙山』(じょうみょうやま)

 「平家物語」の宇治川の合戦に基づいたもの。

IMG_0847.JPG

 

 

などなどの豪華絢爛の山鉾たち。重さは約12トンにも及ぶ。

この巨大な山鉾が四つ角で向きを変える『辻回し』はやはり必見ですね。

祇園祭り

お楽しみは『辻回し』だけではありません。他にも盛りだくさん。

14~16日の『宵山(よいやま)』は山鉾の提灯に灯りがともされ、露店も出ます。

またこの期間は、『屏風祭』といって、山鉾町の町屋では格子を外し通りから見えるように屏風や道具などを公開する慣習があり、これも興味深いです。

『花傘巡行』では花街の舞妓さんに見惚れたり、『いけばな展』あり『献茶祭』あり、狂言や各種伝統芸能も見逃せません。職人技での山鉾の組み立てや、厳かな神事にも触れてみたいですね。

また今年は150年振りに巡行に復帰する『大船鉾』も必見です。

さあ、どれを見ましょうか。前出の地元の方が「全部!」とおっしゃる意味がわかります。

そんな、1ヵ月に及ぶ長いお祭りも、盛りだくさんのスケジュールで、始まったらあっという間・・・

でもこのお祭り、観光客にとっては1ヵ月でも、地元の方々にとっては、これにかける時間とエネルギーは相当なもの。

山鉾の修理、装飾品の復元、お祭り運営費の工面、お囃子や舞いのお稽古、お稚児さん選びに所作などの伝承、お祭りを行うにあたってのさまざまな交渉ごとや問題の解決、住民の団結、思いつくことだけでも大変な労力とエネルギーです。この大がかりなお祭りを、1100年以上も続けているなんてつくづく、あっぱれ!ですね。

まつりをまつる

今回は『祇園祭』について和の魅力をお伝えしましたが、あなたの土地にも伝承されるお祭りがありますよね。

お祭りは疫病退散や災厄の除去を祈ることから始まりました。しかし、近年では、予報や研究、防災、医療などで、その対策は合理的、科学的に取り組まれています。

それでもお祭りは脈々とつながれてきました。少子化問題や過疎化問題を抱えながらもです。

それはどうしてでしょう。

やはりお祭りには私たち日本人が大切にしてきたものがぎゅっと詰まっているからではないでしょうか? 季節感であったり、文化や技法、先人の思いや、そう、いろいろなつながり。八百万の神とのつながり、地域の人とのつながり、ご先祖様とのつながり、歴史とのつながり、ひいては未来へのつながり。

『祭り』とは『纏る(まつる)』ことだと思うのです。纏る(まつる)とは、ほつれないように内側から外側へ糸をまわしながら縫いつけることです。

内側から外側へ、地元から観光客へ、日本から世界へ、親から子へ、過去から未来へと・・・

ほころびては纏り、縫いつけて、つないできた『祭り』。

これからもほつれぬよう、しっかり『纏る(まつる)』。そうしていくものだと思います。

Information/お知らせ

参考文献 

『伝統の祭りを訪ねる』 芳賀日出男 監修  実業之日本社

『京の祭歳時記』 横山健蔵  佼成出版社

『祇園祭』 芳井敬郎他  松籟社

『47都道府県・伝統行事百科』 神崎宣武  丸善出版

 

祇園祭2014日程表

http://kyoto-design.jp/special/gionmatsuri/schedule

Mama's profile/プロフィール

鈴木 麻奈美

鈴木 麻奈美 【日本舞踊藤間流名取・NOSSインストラクター】

記事テーマ

和の魅力

グローバル時代において、和の精神、和の文化を持つことは、これから世界で活躍されるであろうお子さまたちの心のよりどころとなるでしょう。3年半のアメリカ暮らしで気付いた和の魅力、日々の暮らしの中にある和の素敵をお伝えしていきます。あなたの気付きとなりますように。お子さまたちの和のスマイルを育む毎日につながりますように。

Vote/この記事に投票しよう

Evaluation/この記事のみんなの評価

lightbulb_outline

なるほどそうか!役に立った

0

favorite_border

わかる!わかる!共感した

0

feedback

この記事へのコメント

0

Comment/この記事にコメントしよう

Archives/鈴木 麻奈美さんの記事一覧

  • 和の魅力
    国語事典で『わ(和)』を引くと、 ①やわらぐこと。おだやか。 ②むつまじい…
  • 百人一首
    百人一首は日本の古典文学の代表で、百人の歌人の和歌を一首ずつ集めたアンソロジーと言われてい…
  • 美しい言の葉
    日本の美しい言葉と聞いてまず思い浮かぶのは季語。季節を表す美しい言葉です。 例えば…
  • NOSS
    NOSS(ノス)とは、Nihon(にほん)・Odori(おどり)・Sports(スポーツ)…
  • 日本一の山と湖
    日本一高い山、富士山。そして日本一大きい湖、琵琶湖。   …
  • 祇園祭り
    コンコンチキチン、コンチキチン♪ 7月に入って京の町は祇園祭りモード全開です。祇園…
  • たなばた(七夕・棚機)
    むかしむかし、天の川のほとりに織姫という娘がいました。織姫は機織りが大変上手で、…
  • 日本人の美しい立ち居振る舞い
    『江戸しぐさ』ってお聞きになったことありますか? 10年ほど前から公共広告機構が江…

  •   能というと、堅苦しい、難しそう、眠ってしまいそう、敷居が高…
  • 着物事始め
    着物っていいですよね。季節感を楽しんだり、礼節や遊び心を盛り込んだり、母や祖母から受け継ぐ…
  • こどもの日
    5月5日は『端午の節句』五月人形や兜を出し、鯉のぼりを立て、菖蒲を飾り、柏餅やちまきを食べ…
  • 和菓子
    移ろう季節を感じさせてくれるのは自然界のものだけではありません。人間が生みだした和菓子もま…
  • さくら
    名ばかりの寒い立春も三寒四温の春分も七十二候の『櫻始開(さくらはじめてひらく)』も過ぎ、い…
  • 昔の遊び
    皆さまが初めて出合った遊びは何ですか?好きだった遊びは何だったでしょう? 昭和40…
  • ひなまつり
    3月弥生は『桃の節句』、ひなまつり!女の子の健やかな成長を祝うおまつりですね。女の子がいる…
  • おりがみ
    『おりがみ』って素晴らしいと思いませんか?!遊びであり、芸術であり、文化であるの…
  • 和の暦
    和の文化や日本の伝統行事を語る時、切っても切れないのが旧暦といわれる和の暦ですね。 …
  • お正月行事の伝承
    早くも鏡開きとなりましたが、皆様、お正月をいかがお過ごしになられたでしょう?お正月は子ども…
  • 和の宗教
    日本の多くのママたちは、新しい命を授かったら、神社で腹帯をもらい、 『天の神様、仏…
  • 日本舞踊
    お子さまの習い事に日本舞踊はいかがですか?   和のリ…
  • 紅葉
    紅葉は日本文化! と、渡米するまでは、勝手に思い込んでいた私・・・ …
  • 伝統行事と子どもの着物
    七+五+三=十五 そう、十五日は七五三。11月の休日になると、神社で目に…
  • 和のフィットネス
    天高く馬肥ゆる秋。 9月から10月にかけて、園や学校、地域や職場、さまざ…
  • お辞儀
    幼少の頃、『こんにちは』『ありがとう』『ごめんなさい』とペコッとお辞儀を教えられたのを最初…

最新記事

記事一覧を見る

注目トピックス

トピックス一覧を見る

Weeklyゴーゴーリサーチ