日本の多くのママたちは、新しい命を授かったら、神社で腹帯をもらい、
『天の神様、仏様!どうぞ無事に生まれてきてくれますように』と神仏融合のお祈りを唱え、お宮参り、七五三で神社を訪れ、お彼岸さんやお盆にはお墓参りにお寺を訪れる。お地蔵さんがあれば手を合わせ、クリスマスにはイエスキリストの生誕を祝う言葉、『メリークリスマス!』と口にして、大晦日には除夜の鐘をつきにお寺を訪れ、お正月には神社へ初詣・・・これからも子どもの成長とともに、受験と言えば『合格祈願』、年頃になれば『縁結びの神様』でお守りをゲットしたかと思うと、結婚式は教会で・・・
なんて話、ありがちですよね?!
日本人の宗教観っていったいどうなっているのでしょう?!
唯一の神を持つキリスト教やイスラム教の人たちには理解し難い行動でしょう。
そして実は日本人でさえも少し矛盾を感じている・・・
日本人の宗教観を説明するのは難しいことです。
『八百万の神々』と言われてきたように、私たちの周りにはたくさんの神が存在します。
ありとあらゆる所に神が存在し、さまざまな悩みや願いに向き合ってくださるのです。
自然界においては、お天道様にお月さま、雷さまに山の神。森の鎮守・・・
古代より天変地異は神の仕業と考えられてきましたね。
人間の作り出した神社においては小さい社も入れると八万から十万もあるといわれています。
それぞれの悩み、願いにあった神社が存在するのです。
家の中においても、神棚があれば仏壇もある。台所やトイレにも神様がいて、私たちのくらしに根付いています。
こうして私たちのご先祖さまは行事とともに神様の宿る場所を作ってきました。
京都祇園白川の有済橋のそばに『なすあり地蔵』というお地蔵さまがあります。
看板に書かれていることを引用、要約すると、
このお地蔵さまは昭和29年に花見小路通りの水道管工事を市が行った時、白川の川底から掘り出されこの世にお姿を現わされました。それまで何百年の間は暗闇の世界でジッとたえしのんでおられました。この水道工事を請け負った方がこのお地蔵さまを見つけて八坂神社のお神輿の神興会に相談されお堂を建立され、その後、改めてみんなでおまもりしようとの声が高まり、有志の方々の協力で、『なすあり地蔵』とお呼びするようになったそうです。
なすありとは、地元小学校の『有済』に因んだことば。校歌に『たえてしのべばなすあり』とうたわれ、『人間はどんなつらい事に対してもたえしのび努力すれば必ずむくわれ成功する』という事だそうです。
この看板に記された年は平成10年。歴史は浅く、わずか15年前ですが、私はこのお地蔵さまに日本人の宗教観を垣間見たような気がします。
長年冷たい川底で耐えておられたお地蔵さまに思いを寄せるのは、日本人の気質ならでは。
雪をかぶったお地蔵さまに傘をかぶせる昔話のその心なのです。
また、たえしのび努力すれば必ずむくわれるという『たえてしのべばなすありの』という言葉は、我慢を美徳とする日本人がいかにもよりどころとする言葉だと思います。自分の弱さに打ち勝つしるべとしてお地蔵さまにすがるのです。
日本人は無宗教とかたづけるにはあまりに忍びない。
和の宗教は八百万の神々に守られ、暮らしの中に感じ、崇め、それが行事や思考となって根付いているのですから・・・
60年に一度の伊勢神宮と出雲大社の神々のお引っ越しに盛り上がり、
クリスマスも教会も受け入れる。
そんな寛容さが和の宗教観。宗教の自由とともに。。。
参考書籍
『ほんとうの「和」の話』 広田千悦子 著 文藝春秋
『日本の神々と仏』 岩井宏實 監修 青春出版社
鈴木 麻奈美 【日本舞踊藤間流名取・NOSSインストラクター】
記事テーマ
グローバル時代において、和の精神、和の文化を持つことは、これから世界で活躍されるであろうお子さまたちの心のよりどころとなるでしょう。3年半のアメリカ暮らしで気付いた和の魅力、日々の暮らしの中にある和の素敵をお伝えしていきます。あなたの気付きとなりますように。お子さまたちの和のスマイルを育む毎日につながりますように。