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【アクティブ読書術】本当の自分は何処?村上春樹の長編3部作「ねじまき鳥クロニクル」/2017年11月

小説と現実の狭間で

いつもアクティブ読書術の連載をお読み頂きましてありがとうございます。

 

今回は久しぶりに長編小説に挑戦してみました。

村上春樹さんの『ねじまき鳥クロニクル』3部作です。

 

去年あたりから、遅まきながらも村上春樹さんのエッセイを数冊読み始めておりました。

そして、昔の代表作から少しずつ読んでいくことにしました。

 

『ノルウェイの森』の恋愛小説から始まり、サリン事件の綿密な取材をもとに語られる『アンダーグラウンド』を経て、この本にたどり着きました。

 

この秋は長雨や秋台風で何かと屋内にこもりがちになることが多かったように思います。

仕事や家のことも忙しく、ときどき気分転換に小説の世界にどっぷり浸りたくなりました。

読書の秋にはうってつけだったわけです。

 

今回の読書は正直しんどいものになりました。

3部作全部通して読み終わるのが2ヶ月あまりかかったからです。

 

私の生活の隙間時間に少しずつ読み進めました。

 

スープを煮込みながら、仕事のための電車の移動で、公園で、洗濯機を回しながら、現実とは思えないような痛ましくて背筋が震えそうなニュースを聞きながら、夜眠りに落ちる前、というように。

 

小説がじわじわと私生活に浸透していくような、濃密な時間を過ごしました。

五感に訴えかけてくる、村上春樹の世界

村上春樹さんの書く、文章が好きです。

シンプルなわかりやすさと清潔さ。

初めて読む人にも、すっと馴染んでくるのではないでしょうか。

 

一方で、現実を突きつけてくるような逃げ場のない残酷な描写もあって、嘘がないなと思わせる説得力もあります。

そして、読者に空想の余地を残す自由さも持ち合わせています。

どことなく現実感のない登場人物も現れたりします。象徴的に物語をすすめて行くために必要な、不思議で危うい人たち。

謎が謎のまま放置されていたり。

匂わせたまま、どこへも帰結しなかったり。

 

こういう部分がファンが多いところであったり、受け入れられない方には難しい世界観であったりするのかもしれません。

 

言い回しの妙みたいなものや、時折散りばめられるユニークさも小気味良いんです。

 

音楽やお酒、ファッション、風景、人物も魅力的です。

私はこの本によく出てくる、ロッシーニの「泥棒かささぎ」序曲という曲は知りませんでした。

口笛拭きのボーイが出てくる場面では、YouTubeで調べて曲を流しながら臨場感さながら、読み進んでいくのも面白かったです。

 

色彩の鮮やかさだったり、美しさや醜さ、匂いや痛みまで、すべて文章で表わされているのだから不思議です。 

もはやどっぷり村上春樹さんの世界観にやられてしまったようでした。

本当の自分は何処にいるのだろうか?

この小説はあまりに長すぎるのですが、読み進めていくうちに読者である自分と向き合う旅にすり替わっていくような感覚に陥りました。

 

日常のささやかなシーンから始まる物語は、最初は軽快だったのに、読み進んでいくごとに混迷を極めていきました。

ときに迷路に入り込んだようになりました。

 

現実なのか、夢なのか、空想なのかもあいまいになっていきます。息苦しくもなっていきます。

 

ある人物とある人物同士について、時空を超えてつながっているようで、果たしてそうなのかもわからない。

ある出来事はリンクしているようにも見えるし、違うようでもある。

すべてが不確かです。

グラグラ揺れている橋を渡っているような、不安を掻き立てられる小説です。

 

都市モンタージュ.jpg

 

そういうわけで、登場人物も、不思議で謎めいていて、この人はこういう登場人物だと明確に語ることが難しいのです。

 

村上春樹さんは、プロットというものを作らないで、物語を紡いでいくことでも知られています。緻密に編まれているようなのに、謎が多くて考えさせられます。

 

私は「本当の自分とは何処にいるのだろうか?」「私とは何か」ということを常に考えさせられました。

そして、大事な人に思いを馳せるということについても。

 

奇しくもテレビからは背筋の凍りそうなニュースが流れてきました。ちょうど小説の中でも目を反らしたくなるような残酷な描写に直面しました。

読書体験を通じて、人の痛みを想像するという力はついていくものだと私は信じています。

しかし、現在の私たちに果たしてそうした想像力は備わっていると言えるでしょうか。

 

つまりそれは、「命や尊厳を脅かしてはいけない」という人間の根底にあるものへの想像力のことです。

ごそっと抜け落ちていないか、ときどき点検しないと、怖いなと思うことがよくあります。

 

ネット上の文字の情報は速くて瞬時につながります。

読書はその点、スピードがすごく遅いです。例えば、1冊を読むのにものすごく時間がかかったりします。

 

でも、時間をかけたことは間違いなく心に残る。

 

結局、私の心に残った言葉は小説の中の牛河という男の言葉に集約されているような気がします。 

 

「人は島嶼(とうしょ)にあらず」 

 

このキーワードについて知りたい方は、どうぞ、3部作をお読みください。

Information/お知らせ

【今回のキラリ本】

村上春樹著

『ねじまき鳥クロニクル 第1部・第2部・第3部』(新潮文庫) 

 ●「+Sleep(プラススリープ)」

「ママのための睡眠講座」「女性のための睡眠講座」「中学生のための睡眠講座」「シニアのための睡眠講座」、その他一般向けに、幅広い世代へ向けた睡眠講座や講演、研修を育児サークル、教育機関、行政機関等で開催しています。

 

●現在、募集中の講座

 2017年12月7日(木)

「赤ちゃんの生活リズムと寝かしつけ」@相模原市

(クリック↑すると詳細記事へ) 

赤ちゃん連れ、歓迎です。

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鶴田 名緒子

鶴田 名緒子 ー+Sleep(プラススリープ)代表 睡眠健康指導士・睡眠改善シニアインストラクターー

記事テーマ

生き方がキラリと輝く!アクティブ読書術

読書の楽しみはページを開いていくだけでワクワクするような世界に飛び込めるところにあります。育児の合間に手に取りたくなる、読書が苦手な人にも興味を持ってもらえるような本の読み方や、いつどこで読書をするのかというシチュエーション、おすすめの本の感想など、様々な視点から読書体験をご紹介します。1冊の本から人生を味わい深く輝かせていきましょう。

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