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急性ストレス障害、そして 外傷後ストレス障害(PTSD)

事故・ケガ 子どもの病気 教えて!ドクター

(2011年 夏号 掲載)

先進国の子どもの三大健康問題は、心、栄養、そしてアレルギーに関するものです。

アレルギーとしてはアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、花粉症、喘息などで、栄養関連では発展途上国の栄養不良とは反し肥満や拒食症(摂食障害の代表)で、そして心ではストレス関連や発達障害などです。

ここでは今回の東日本大震災に関連するストレスの問題を考えてみましょう。

外傷後ストレス障害(PTSD)とは

このたびの東日本大震災や不慮の事故など命の危険を感じる体験をはじめ、虐待、いじめ、暴力、犯罪が心の傷となり、不安や不眠、恐怖や悪夢、無気力感などを慢性的に生じる病気です。

また直接の体験だけでなく、TV映像や話などの間接的な体験でも発病します。2001・ 9・11の米国同時多発テロでニューヨークの世界貿易センタービルに飛行機が突っ込むTV映像が繰り返し流されたため、後に精神科医や心理カウンセラーを訪れる人が増えました。子どもは感性が豊かですので、悲惨な映像を見せるのは避けてほしいものです。

PTSDの症状とは? いつ頃から

子どもに出る症状では、指しゃぶりや母親から離れらないなどの「赤ちゃん返り(退行現象)」が起こったり、急に無口や元気がなくなったり、逆に理由なく暴れたり、暴力を振ったりという行動などもあります。体験直後でなく数週間から数ヵ月後にみられますが、時に数年経ってから発病することもあります。

症状は4週間以上続きますので一次的なものというより慢性のストレス病と理解するとよいでしょう。

一方、体験早期に同様の症状が出現するものの4週間以内に訴えがなくなるものは「急性ストレス障害(反応)」として別扱いされます。

ストレスとは?ストレッサーとは?

「ストレス」という言葉はよく使われますが、心身の負荷をもたらす外からの刺激に対する身体の反応をいいます。そしてストレスを生じる外部刺激をストレッサー(ストレス要因)と呼びます。

ストレッサーとなる出来事には、①人生レベル(死亡、転居、入学や卒業、就職、結婚など)と、②日常レベル(生活への不満、時間の無駄遣い、対人関係の悩みなど)に分けられます。

人は各々ストレスに対処する方法をもっていますが、対処に失敗すると身体面では心身症が現れ、精神面では不安、焦燥、抑うつなどを示す反応性の精神障害が生じます。小さな子どもは対処法が未熟であり心配ですが、一方回復が速いことも多いです。

世の中にゆとりが減ったためか大人でもストレスを感じることが多いのが先進国の現状でしょう。

PTSDの子どもへの対処法は?

1)子どもに安心感を与える/赤ちゃん返りを叱らない。子どもを一人にしない。家族で一緒に食事をしたり、遊んだりする。抱きしめるなどのスキンシップをする。悲しみ、怒り、不安を感じることは普通のことと教える。自分を責めている子どもには「あなたが悪いのではない」と話す。「頑張って」「我慢して」ではなく、「守ってあげるよ」「大丈夫だよ」と言葉をかける。

2)子どもが混乱している内容を整理する/子どもが同じことを繰り返し質問しても、丁寧に答える。

3)子どもの気持ちを受け止める/目を見て、相づちしながら話を聞く。

4)子どもに気持ちを表現させる/自由に震災の絵を描かせる(アートテラピー)、作文させるなどで心の内面を外に出させることは心の傷を過去形にできることになります。

5)子どもに活動の場を与える/コミュニケーションの場に参加させ、負担にならない程度の手伝いをさせる。

保護者も「頑張る」「我慢する」と無理せず、孤立せず、周囲の皆さんを仲間とし、あせらずに現状を好転していきましょう。また仲間に小児科医、心療内科医、精神科医、臨床心理士などの専門家を加えましょう。 PTSDは時の経過で自然に和らぐことがあることも知っておいてください。

 

服部益治先生

兵庫医科大学特別招聘教授、医療福祉センターさくら院長。日本小児科学会専門医、日本腎臓学会専門医、兵庫県小児科医会顧問ほか。専門は、小児科全般、腎臓病、夜尿症、予防接種、傷害予防など。次世代を託す子ども達に夢大きく心豊かに育ってもらうため活動中。

服部益治

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