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歩き方が気になるとき (歩容異常)

子どもの病気 教えて!ドクター

(2023年 秋号 掲載)

正常の歩き方とは?

「どうも歩き方が気になる。」と外来を受診するお子さんは少なくありません。そのきっかけは、きょうだいや同年齢の子どもとの歩き方に違いを感じたためのようです。しかし、通常3歳ころまでは正常の歩き方とする基準はありません。個々で歩き方には個性があり、よって他の同年齢のお子さんと比較することはあまり意味がありません。ごきょうだいであっても同様です。教科書的には、成人と同様な歩行パターンを獲得するのは7~8歳くらいだと言われています。

よく見られる歩容異常(内股歩行)

歩容異常としてもっとも多く受診するのは、内股歩行(うちわ歩行)です。両方のつま先が内側に入る歩き方です。(

中には自分の足と足が歩行中に重なってしまいそうになることもあるようです。よく先天性内反足と間違われ紹介される場合がありますが、内反足は出生直後から気づく足部変形であり、歩行開始後からみられる内股歩行とは明らかに違います。O脚と合併することもあります。家族は内股歩行が、転び易さの原因や将来の運動能力に悪影響をもたらすことを心配して来院しますが、そのようなことはまずありません。

以前3つの幼稚園で内股歩行について実態調査をしたことがあります。その結果では、3、4、5歳の各年齢で内股歩行とされる例は程度の差はありますが、約30%程度みられました。しかし、その中で日常生活上何らかの問題を生じていた子どもさんは一人もいませんでした。よって、これらが病的なものではなく、発育途上でみられる一つの変化と捉える方が適切だと思われました。通常内股歩行は、7~8歳くらいまでに自然改善が期待できるとされています。事実、内股歩行が気になり来院する頻度は、年齢とともに減少傾向にあり、就学前後での受診はほとんどありません。

内股歩行の原因

この原因については、大腿骨前捻角(前方への捻じれの角度)が大きいままであることが有力とされています。大腿骨前捻角は、歩行開始前では大きく、その後歩行開始とともに徐々に減少します。しかし、内股歩行例では、この前捻角の減少が遅れています。つまり、両下肢を内側にねじることでその遅れを代償していると考えられています。また、大腿骨の前捻角が大きい場合、股関節の内旋(内側に捻じる)角度が外旋(外側に捻じる)角度より大きくなるため、内股歩行例ではいわゆる「トンビ坐り」()を好むことが一つの特徴になっています。

治療については、特に必要ではなく前述したように7~8歳までに自然改善が期待できます。その間、もし可能であれば、「トンビ坐り」をなるべく「あぐら坐り」に変え、前捻角の減少を促すことは試みてもいいでしょう。しかし、内股歩行が年齢とともにかえって悪化傾向となったり、10歳くらいまでにまったく改善が見られない場合には、一度専門医を受診してください。

注意を要する歩容異常とは?

正確に歩容異常を判断することは私たち専門医でも難しいことがあります。もちろん転倒や転落などの後に歩き方の異常(多くは左右どちらかの下肢をかばう歩き方になります。)があれば、その影響を考え整形外科を受診しX線検査を受けてください。

特別なエピソードがなく、歩行開始時からどちらかの肩が下がるような歩き方が続く場合には、先天的に左右の下肢長に差がある場合があります。一度専門医の診察が必要です。先天性股関節脱臼や先天性脚長不等症などの可能性も考えられます。また、歩容異常に運動発達(首すわり・お座り・はいはいなど)や歩行開始時期の遅れを伴う場合にも、一度専門医の診察を受けることをお勧めします。受診の際には、いつから歩き方が気になったか? その前後で元気さや動き方に変化があったか? 以前できたことで最近できなくなったことがあるか? などは重要な所見ですので必ず医師に伝えてください。

 

亀ヶ谷真琴先生

千葉こどもとおとなの整形外科(千葉市緑区)名誉院長。千葉県こども病院整形外科顧問。医学博士。千葉大学医学部臨床教授。元千葉県こども病院 整形外科 部長。著書は『小児骨折における自家矯正の実際』医学書院など。

亀ヶ谷真琴

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