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腸内細菌叢(さいきんそう)を整えて食物アレルギーを予防しよう

アレルギー 子どもの病気 教えて!ドクター

(2023年 秋号 掲載)

食物アレルギーの現状

食物アレルギーはこの20年くらいで非常に増えてきています。乳児で10%、保育・幼稚園児で5%くらいのお子さんたちが鶏卵・牛乳・小麦などに対してアレルギーがあるとされています。以前は、食物アレルギーの予防法として、妊娠中・授乳中のお母さんや赤ちゃんは卵や牛乳を摂取しないことが推奨されていました。ところがこの予防策は全く効果がないどころか、食物アレルギーは増加の一途をたどっていました。

その後、食物アレルギーは、アトピー性皮膚炎などで荒れた皮膚から食物が体内に入って起こることが証明されました。また、アレルゲンになりやすい食物の摂取開始を遅らせるとかえって食物アレルギーになるリスクが高まってしまうこともわかりました。現在では、食物アレルギーの予防には、湿疹をきちんと治療しつつ、離乳食を遅滞なく進めることが大切とされています。

最近では、木の実(ナッツ)アレルギーが1、2歳の幼児に急増しています。特に卵アレルギーのお子さんはナッツアレルギーになりやすいので、担当医と相談して、1歳すぎからナッツ(ペーストや粉末などで)の摂取を開始しておくのもいいと思います。

腸内細菌叢とアレルギーの関連

さて、近年の食物アレルギーの急増の原因はなんでしょうか? アレルギーは遺伝因子と環境因子の両方で起こりますが、遺伝因子は短期間では変わらないので、環境因子の変化ではないかと考えられています。環境因子として最近特に注目されているのが腸内細菌叢(腸内細菌の集合)です。

人間の腸内には自分の細胞の数倍とも言われる数の細菌が住んでいます。世界各地域での研究から、良好な腸内細菌叢からの偏り(ディスバイオーシスと言います)がアレルギー患者さんで見出されたり、アレルギーの発症に先行することが明らかになってきました。

では、アレルギーになりづらい「良い腸内細菌叢」はどのようなものでしょうか? 最近の研究から、腸や免疫の細胞の調節には一部の腸内細菌が作る「短鎖脂肪酸」が重要な役割を果たしていることがわかってきました。そうするとアレルギーにならないためには、短鎖脂肪酸を作る細菌を摂取すればいいように思いますが、短鎖脂肪酸を作る菌のエサが十分にないとなりません。乳児期にはビフィズス菌が作る乳酸や酢酸がエサになります。したがって、赤ちゃんのビフィズス菌を増やすことが望まれます。母乳中にはビフィズス菌だけが利用できる特別なオリゴ糖(ヒト母乳オリゴ糖:HMO)がたくさんはいっています。このためWHO(世界保健機関)はアレルギー予防のためにも母乳栄養を推奨しています。

しかし、日本では母乳栄養児の方が食物アレルギーの発症率が高いという報告があります。母乳栄養児と混合栄養児の腸内ビフィズス菌の割合を調べると母乳栄養児の方がビフィズス菌が少ないという報告もあります。母乳中のHMOの量や質の違いがアレルギー発症に関連しているのかもしれません。ただ、母乳中にはHMO以外に腸内細菌叢に影響を与える栄養素が多くあります。その一つがビタミンD (VD)です。母乳中にはVDはごくわずかに含まれているだけなので、母乳栄養児はVD不足になりがちです。

VDは免疫系に働きかけてアレルギーを予防する細胞を増やすことも知られていますが、最近ではVD値が高い乳児の方がビフィズス菌が多いこともわかってきました。実際に我々が行った研究では、生後から6か月間VDを飲んでもらった赤ちゃんは飲んでもらわなかった赤ちゃんに比べて食物アレルギーになる頻度が1/3に減っていました。母乳栄養のお子さんにはVDの補充をするのが良いと考えられます。また、VDの80%は紫外線によって皮膚で作られると言われています。過剰に日光を避けるのではなく、適度に陽にあたるのがいいでしょう。

離乳食が始まると、ミルク以外の食物を栄養として短鎖脂肪酸を作る菌も増えてきます。食物繊維やヨーグルト、納豆などの発酵食品は短鎖脂肪酸を作る腸内細菌叢を増やしてくれます。良好な腸内細菌叢でお子さんをアレルギーから守りたいものです。

 

下条直樹先生

1979年、千葉大学医学部卒業。米国国立衛生研究所研究員を経た後、2013年より千葉大学大学院医学研究院小児病態学教授、2015年、千葉大学医学部附属病院アレルギーセンター長。2020年より千葉大学予防医学センター特任教授、TUMSわんぱくクリニック医師。放送大学客員教授、NPO法人千葉アレルギーネットワーク理事長。

下条直樹

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