今回、「感染予防」というお題を頂いて正直なところ困ってしまいました。というのは、日頃から小児科医の仕事は感染症の予防・治療よりも「成長するこどもの伴走者」であることが大切で、長いスパンでの成長を考えれば「カゼくらい、ひく時はひくよね。」と考えているからです。

今や死語となった「鼻たれ小僧」は、軽微な感染を繰り返し、そのたびに鼻水が垂れて、それをふき取っていた袖口がテカテカに光っていた人たちです。そういった日々を繰り返していた明治生まれの元鼻たれ小僧たちは、その経験によって自らの免疫系が鍛えられ、感染症のみならずいわゆる「がん免疫(腫瘍免疫)」も高められていたようです。その理屈は現代でも通用するわけで、適度な感染は長い人生を豊かにするものと考えます。もちろん「おおころび」して入院などの事態に至っては困るので、そうならないよう私たち小児科医が構えているのです。
そうは言っても保育所にお子さんを預けていらっしゃるお母さん、お父さんたちにとっては、発熱などによる「呼び出し」や「出席停止」は大きな問題となります。あまた多くの「感染予防」の記事は巷にあふれており、予防接種、うがい、手洗いなどの基礎知識は皆さんお持ちのことと思いますので、その点についてはここではあえて触れません。
「それ以外」ということになると、あまり医学的な方策からは外れてしまうかもしれませんが、「感染を予防する」というお子さんの外側の対策を離れ、お子さん自身を強くする方策を考えてもいいのかもしれません。
「神様がその分身として、私たち人間を創造された」という話がありますが、そうであれば、私たちの心身は設計段階の想定を大きく外れた形で使われていることになります。
「多くの生活習慣病は、日本全体で恨みっこなしで昭和の暮らしに戻れば、あっさり解決される。」という考え方があります。子どもたちを取り巻く生活習慣も大きく変化しておりますので、これもまた昭和の暮らしに戻せばあっさりと解決する部分は多いものと思われます。
当時と現在とでは食生活に大きな変化があることは明白です。食事よりも大きな問題は、運動量の不足とそれに伴う筋力の低下です。運動の基本である「歩く」という行為は絶対的に不足し、ふくらはぎなどの筋肉量の低下は筋肉運動がポンプとなって流れるリンパ流の停滞をもたらし、これは免疫系の機能の低下の一因となります。
総じて「弱っちい」現代の子どもたちをたくましく「改造」することは医学的な小技よりも有効であると考えます。
そして設計段階の想定と一番大きくかけ離れていることは、スマホの長時間使用などによって必然的に引き起こされる睡眠の質・量の低下です。「食べる」「遊ぶ」「寝る」の子どもの「三大仕事」の中で一番なされていない部分です。深い睡眠中には、成長ホルモンをはじめ各種ホルモンの分泌が劇的に変化し、その影響を受けて眠っている間に子どもたちの体は作られるという部分があります。この作業が滞れば、感染予防の能力も必然的に低下の方向に向かいます。あまり医学的な話ではありませんが、原始からの基本的な営みである、食べる、遊ぶ、寝る、といった部分を、昭和とまでは言わなくとも、スマホの無かったお母さん、お父さんが子どもの頃の生活に戻してあげてください。
そのためには親の側にも多くの苦痛を伴います。「親は使うが、子どもにはスマホは使わせない」では全く物事は動きません。何か事を起こすには「家族そろって」の必要があります。ごちそうでなくてもいいので、良質な食事をしっかり食べ、日の当たる外で元気に遊び、モニター、スクリーンを避けて、日中の疲れでさっさと寝てしまう。
ご家族も付き合える範囲で、可能な部分から始めてみてください。


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